COLUMNコラム
COLUMN · #016

直流が落ちると、受変電設備で何が起きるか

受変電設備には、電気を送る交流の主回路とは別に、設備を監視して守るための直流電源が組み込まれています。この直流を支えているのが蓄電池と充電器です。直流が失われると、事故が起きたときに設備を「守る側」の動作、つまり遮断器を開いたり異常を検知したりする動作が出せなくなります。しかも直流のいちばんの出番は停電したその瞬間で、そのとき交流側からはもう電気が来ません。だから、ふだん静かに待機していて存在の見えない直流電源ほど、寿命前の計画的な更新が必要になります。

屋外に設置された受変電設備(キュービクル)の盤面(高圧受電盤・低圧電灯盤・コンデンサ盤)
VOL.016 — SENTREI COLUMN
VOL. 016 文・株式会社セントレイ 佐藤

こんにちは、セントレイの佐藤です!このコラムでは、産業用蓄電池まわりの「現場で役に立つ話」をお届けしています。今回は、ふだんの回より一歩踏み込んだ「専門シリーズ」の一本です。

今回は、施主さんへの説明にそのまま使える切り口として「直流が落ちると受変電設備で何が起きるか」を、原理から順を追って整理します。蓄電池の更新をなぜ先送りしない方がいいのか、その理由が地続きで見えてきます。少し長くなりますが、工事会社のみなさんが自社の提案でお客さまに説明するとき、根っこから話せるようになる内容を目指します。

そもそも受変電設備には、電気が二系統ある

まず頭に入れておきたいのは、受変電設備の中には役割の違う電気が二系統あるということです。ひとつは主回路の交流、もうひとつが制御・保護のための直流です。

主回路の交流は、受電した電気を変圧して負荷まで送り届ける本線です。工場やビルで実際に機械や照明を動かしているのは、こちらの電気です。一方で、その本線が正常に流れているかを見張り、異常があれば瞬時に切り離す。この見張りと切り離しの仕事をしているのが、直流電源につながった制御・保護回路です。

なぜわざわざ直流を別に持つのかというと、主回路の交流が止まったり乱れたりしたそのときにこそ、確実に動いてほしいのが保護回路だからです。監視する電気を、監視される電気と同じ系統からもらっていては、本線が止まった瞬間に監視役も一緒に止まってしまいます。だから保護の電源は、主回路とは切り離された、独立して生きていられる直流にしてあります。

直流電源は「動かす」より「守る」ために働いている

受変電設備の直流電源は、設備を動かすためというより、設備を守るために働いています。

直流で動いているものを具体的に挙げると、遮断器を開くためのトリップコイル、過電流・地絡・不足電圧といった異常を見つける保護継電器、状態を知らせる表示灯や警報などです。たとえば電路のどこかで短絡や地絡が起きると、保護継電器がそれを検知して、遮断器のトリップコイルに「開け」という指令の電流を流します。トリップコイルが動いて遮断器が開き、事故点が主回路から切り離される。この一連の動作を電気の面で支えているのが直流電源です。

大事なのは、この仕事がふだんはまったく表に出てこないという点です。事故も停電も起きていない平常時は、保護継電器は静かに見張っているだけで、遮断器も開きません。設備が健全なあいだは、直流電源は「何もしていないように見える」のです。だからこそ、いざというときに動けるかどうかが見えにくく、劣化に気づきにくい設備でもあります。

停電した瞬間、交流側からは電気が来ない

見落とされがちなのは、直流電源がいちばん必要になるのが、停電したまさにその瞬間だという点です。そしてその瞬間、交流側からはもう電気が来ていません。

停電が起きれば、主回路も、そこにぶら下がる交流の補機類も、いっせいに電気を失います。もし保護・制御の電源を交流からとっていたら、停電の瞬間に監視役まで電源を失い、遮断器を切ることも、状態を表示することもできなくなってしまいます。これを避けるために、直流電源には蓄電池が組み込まれています。停電で交流からの供給が途絶えても、蓄電池に蓄えた電気で直流を出し続け、保護・制御を生かしておけるからです。

では、その蓄電池はふだんどうしているか。蓄電池は放っておくと自然に少しずつ放電してしまう性質があるので、ふだんは充電器から絶えず弱い充電を受けながら、満たされた状態で待機しています。この、常に満充電近くに保っておく充電のしかたを浮動充電と呼びます。イメージとしては、いつでも走り出せるように、止まっているあいだもエンジンを暖めているような状態です。

数字で見る、待機している直流電源

具体的な数字で見ておくと、腹に落ちやすくなります。ここでは制御用としてよくある100V級の直流電源を例にします。

鉛蓄電池は1つのセル(単電池)の公称電圧が2Vなので、100V級の直流をつくるにはおよそ50セルを直列につなぎます。そして浮動充電で待機しているときの電圧は、制御弁式の据置蓄電池でセルあたり2.23Vが標準です。ということは、待機状態の総電圧は「2.23V × 50セル = 約111.5V」あたりになります。ふだんはこの電圧で、充電器がじわじわ充電しながら、蓄電池が満タン近くを保って待っています。

ここで想像してほしいのが、この50セルのうちのいくつかが劣化していたらどうなるか、です。健全なうちは何の問題もなく111.5V付近を保てますが、劣化が進んだ電池は、停電して負荷(保護・制御回路)に電気を供給し始めた途端、電圧が大きく下がってしまいます。必要な電圧・電流を出しきれず、肝心の停電時に役目を果たせない。健全なうちは何も起きず、劣化が進んだときに限って動作が求められる。これが、蓄電池の更新を後回しにできないいちばんの理由です。ちなみに一般に、容量が定格の80%程度まで落ちたあたりが更新の目安とされます。なお、これはあくまで寿命判定・更新のタイミングを見るための目安であって、非常電源の放電をどこまで許すかを定める法令上の基準(許容最低電圧)とは別の話です。同じ80%という数字が出てくる場面がありますが、意味するところが違うので混同しないようにしてください。

直流が落ちると、守る動作そのものができなくなる

そのうえで本題に戻ります。直流が失われると、設備を守る動作そのものが出せなくなります。

考えてみれば当然で、遮断器を開くにはトリップコイルに電流を流す必要があり、その電流の出どころが直流電源です。直流が落ちていれば、保護継電器が異常を検知しても、その先で遮断器を開かせる力がありません。「異常を見つける」ことと「異常を切り離す」ことは別の動作で、後者を成立させているのが直流なのです。検知はできても結果につながらない、という状態が、直流喪失のいちばん怖いところです。

ただし、どの保護がどのように影響を受けるかは、受変電設備の構成や保護方式によって変わります。ここは一般論として押さえていただき、実際の設備でどこにどう波及するかは、個別に図面と現地で確認するのが前提です。設備ごとに事情が違うので、一律の断定はできません。

波及は、電気室の外にも広がりうる

さらに知っておきたいのは、直流電源が支えているのは受変電盤の中だけではない、ということです。建物側の安全設備にも及びます。

停電時に足元を照らす非常照明や避難の向きを示す誘導灯、かごの中に人がいるかもしれないエレベーターの制御、監視や通報を担う通信系など、直流を頼りにしている設備は少なくありません。これらは、いざ停電というときにこそ働いてほしい設備ばかりです。

ただし、どの設備がどの電源系統にぶら下がっているかは建物ごとに違います。ですから「直流が落ちればこれらがすべて止まる」と一律には言えず、系統の分け方しだいで影響の出方は変わります。ここも設備ごとに異なる前提で、影響範囲は現地確認で確かめるのが正確です。なお、蓄電池設備の維持は関係法令でも求められている領域なので、施主さんへの説明では「点検で健全性を保っておくべき設備」として位置づけると、必要性が伝わりやすいと思います。

よくある疑問:「動いていないなら、まだ替えなくてもいいのでは?」

施主さんからよく返ってくるのが、「ふだん何も起きていないのだから、まだ替えなくてもいいのでは」という疑問です。これはとても自然な感覚なのですが、直流電源に関しては逆になります。

直流電源は、動いていないから健全なのではありません。動作を求められていないだけで、そのタイミングはこちらの都合では選べません。停電も事故も、来てほしくないときに来ます。そのとき蓄電池の容量が落ちていれば、守る動作が出ないという最悪の形で劣化が露見します。壊れてから気づく設備ではなく、点検データを見ながら寿命の前に手を打つ設備だからこそ、「まだ動いているうち」に計画的に更新しておく価値があるのです。

見えない設備ほど、計画更新が要る

直流電源のように「ふだん見えない設備」ほど、計画的な更新が要ります。理由はここまで見てきたとおりで、平常時には劣化がわからず、いちばん頼りたい停電の瞬間に実際の状態が表に出るからです。

セントレイは、産業用蓄電池の仕入れ先として、形式のご相談から手配までお手伝いしています。既設の型式と数量がわかれば、納期の目安まで含めてお見積りし、必要に応じて据付・保守といった付帯工事まで一貫してお引き受けします。施主さんへの説明材料づくりも、お気軽にご相談ください。

それではまた、次回のコラムでお会いしましょう!
──株式会社セントレイ 佐藤

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