COLUMNコラム
COLUMN · #015

電池だけ替えるか、盤ごと替えるか

蓄電池と、それを収める直流電源装置(盤)とでは、想定している使用年数がそもそも違います。蓄電池は形式ごとの期待寿命で寿命が来ますが、装置本体はそれより長くもつのが一般的です。だから更新のたびに「電池だけで済むか、盤ごとか」の判断が要ります。判断の基準はシンプルで、次に入れる電池が寿命を迎えるまで、装置側がもちそうかどうか。この一点に集約できます。

タブレットで盤の状態を記録する作業員
VOL.015 — SENTREI COLUMN
VOL. 015 文・株式会社セントレイ 佐藤

こんにちは、セントレイの佐藤です!このコラムでは、産業用蓄電池まわりの「現場で役に立つ話」をお届けしています。今回は、ふだんの回より一歩踏み込んだ「専門シリーズ」の一本です。

今回は、工事会社のみなさんが自社の提案書にそのまま使える「電池だけ替えるか、盤ごと替えるか」の考え方を、順を追って整理していきます。年数の数字を出しながら、なぜそういう判断になるのかまで踏み込みますので、お客さまに理由を添えて説明したいときの下敷きにしてください。

まず、電池と装置は寿命の長さが違う

出発点は、電池と装置で想定使用年数が違うという事実です。ここを押さえないと、更新範囲の議論が始まりません。

据置鉛蓄電池の期待寿命は、メーカー公表値で、HSE形が5〜7年、MSE形が7〜9年、長寿命MSE形が13〜15年です。いずれも周囲温度25℃を前提にした期待値で、保証値ではありません。一方、これらを収める直流電源装置(整流器盤)そのものは、電池より長く使えるのが通例で、一般には15〜20年ほどが目安と言われています。

この二つを並べると、ズレがはっきりします。たとえばMSE形の電池を7〜9年で更新していくとすると、装置が使えるあいだに電池は2回ほど更新期を迎える計算です。装置1回に対して電池が複数回。この非対称こそが、そもそも「電池だけ替える」という選択肢が成り立つ理由です。もし両者の寿命が同じなら、毎回まるごと替えるしかありませんが、実際には装置に余力が残っているからこそ、中身の電池だけを入れ替える判断ができるのです。

なぜ電池のほうが先にへたるのか

ひとつ理由に触れておくと、電池が先に寿命を迎えるのは、電池が化学反応で電気を出し入れする消耗品だからです。ここが装置との違いです。

蓄電池は、充放電のたびに極板の内部で化学変化を繰り返し、少しずつ元に戻りきらない変化が積み重なっていきます。加えて、周囲の温度に寿命が強く左右されます。一般に、周囲温度が10℃上がると鉛蓄電池の寿命はおよそ半分になるとされます。これは化学反応が温度で速くなるためで、公開されている技術指針でも示されている考え方です。

具体的に当てはめてみましょう。MSE形の期待寿命は25℃で7〜9年ですが、もし盤内や電気室の年間平均が35℃だとすると、10℃高い分で計算上はおよそ半分、3.5〜4.5年ほどまで縮む見当になります。夏場に熱がこもる盤や換気の弱い電気室では、カタログの年数をそのまま使わず、温度分を割り引いて更新計画を立てます。装置本体は電子部品や機構部品の集まりで、電池ほど温度で寿命が急変しないため、結果として電池のほうが先に交換時期を迎えます。

電池だけで済むケース、済まないケース

そのうえで判断に入ります。多くの場合、装置がまだ健全なら電池だけの交換で済みます。ただし、電池側にもいくつか守るべき前提があります。

まず、新品と既設を混ぜて使うのは基本的に避けるのが安全です。同じ形式の電池でも、既設側が劣化していると、後から入れた新品の寿命がその既設に引きずられて短くなってしまうからです。組電池は直列でつながって一体で働くので、弱いセルに全体のペースが合わされてしまう、と考えるとわかりやすいと思います。やむを得ず一部だけを交換する場合でも、形式違い・容量違い・メーカー違いの混用はできません。ここは動作の安全に直結するので、例外を作らないのが原則です。

ですから、劣化がある程度まで進んだ電池群は、一部だけ差し替えるのではなく、一括で更新するのが基本線になります。これが「電池だけで済む/済まない」を電池側から見たときの分かれ目です。一部だけ劣化しているように見えても、全体が同じ年数を経ていれば、残りも遠からず同じ時期を迎えます。

「電池だけ」の中にも選択肢がある:長寿命形への置き換え

もうひとつ知っておくと提案の幅が広がるのが、「電池だけ替える」といっても、同じ形式に戻すだけではない、ということです。長寿命形への置き換えという選択肢があります。

長寿命MSE形は、標準のMSE形からの置き換えを想定して設計された系統で、期待寿命は25℃で13〜15年と、MSE形の7〜9年に比べて長めです。うまくできているのは、この長寿命形が、置き換え元のMSE形と同じ容量・同じ寸法で用意されているケースが多いことです。寸法が同じであれば、既設の架台をそのまま流用できる可能性があり、更新工事の負担を抑えられます。

つまり、装置がまだ健全で「電池だけ」でよい場面でも、次の交換までの間隔を延ばしたいなら、標準形に戻すか長寿命形にするかという選び方ができます。交換の頻度を減らしたいお客さまには、この選択肢を添えると喜ばれます。もっとも、寸法や端子の適合は型式ごとに確認が必要なので、置き換えの可否は個別に照合したうえでご提案します。

装置側に出るサインを見逃さない

一方で、電池だけを追いかけていると見落としがちなのが、装置側のサインです。ここが出ていると、電池を新品にしても不安が残ります。

わかりやすいのは、動作面の乱れです。警報が誤って出るようになった、表示器の表示が不安定になった、といった症状は、装置の内部部品が劣化し始めたサインのことがあります。盤の中には、電源部のコンデンサやリレー、制御の基板、冷却ファンといった部品が入っていて、これらにはそれぞれ交換の推奨時期があり、電池ほど長くはもたないものもあります。装置全体の寿命は15〜20年ほどと言われますが、その手前で内部部品が先に劣化することは珍しくありません。

そしてもうひとつ、判断を左右するのが補修部品の供給状況です。装置が古い世代になると、故障したときの交換部品が入手しにくくなります。電池はまだ問題なく替えられても、いざ装置が壊れたときに直す部品がない、という状態が近づいているなら、話は変わります。その場合は、目先の電池交換で延命しつつも、次の更新は盤ごとを見据えた計画にしておくのが現実的です。

盤ごと更新で増える工程

判断が「盤ごと」に振れた場合、電池交換にはなかった工程が加わります。ここを見積もりに織り込んでおかないと、工期も費用もぶれます。

まず、古い盤の撤去です。据え付けを固定しているアンカーを外し、場合によっては打ち直すことになります。次に新しい盤の据付。そして地味に手間がかかるのが、端子台の新旧対応です。装置が替わると、端子台の番号や配置が既設と変わることがあり、外した配線をそのまま同じ番号に戻せるとは限りません。そこで、旧盤の配線と新盤の端子台を突き合わせた対応表を作ってから復旧します。ここを省くと復旧ミスにつながるので、地味でも欠かせない工程です。

据付が終わってからも、そのまま通電して終わりにはなりません。運搬中の振動などで傷んでいないかを確かめる絶縁抵抗の測定、電圧の確認、そして動作・警報・連動といった各種試験を行い、設計どおりに守りの動作が出ることを確認します。電池交換に比べて工程が明らかに増えるぶん、事前の現地調査で盤の製造年や端子構成、据付状況まで見ておくことが、後々のやり直しを防ぎます。

判断の基準は「次の電池が寿命を迎えるまで」

まとめると、判断の基準は冒頭に挙げた一点、「次に入れる電池が寿命を迎えるまで、装置がもつか」です。

たとえば、いま入れる電池がMSE形で7〜9年もつとして、装置がその期間を問題なく越えられそうなら、今回は電池だけで十分です。逆に、装置側に動作の乱れが出ていたり、補修部品の供給が細ってきていて、次の電池が寿命を迎える前に装置が力尽きそうなら、二度手間を避けるために盤ごとの更新を検討する、という筋道になります。もちそうなら電池だけ、もたなそうなら盤ごと。考え方はこれだけシンプルです。

もっとも、実際にどちらを選ぶかは、盤のメーカー・製造年・部品の供給可否といった個別事情しだいなので、最後は現地調査で見極めることになります。

既設の型式と数量がわかれば、納期の目安まで含めてお見積りし、電池交換から盤まわりの付帯工事まで一貫してお引き受けします。「電池だけで足りるか、盤ごとか」の見極めも、ご一緒に整理できます。迷ったら、銘板の写真を送ってください。こちらで確認します。

それではまた、次回のコラムでお会いしましょう!
──株式会社セントレイ 佐藤

この記事をシェア 𝕏 f L B!

蓄電池の調達・更新・保守のご相談はお気軽にどうぞ。

お問い合わせ
← コラム一覧へ戻る

見積り依頼はこちら