こんにちは、セントレイの佐藤です!このコラムでは、産業用蓄電池まわりの「現場で役に立つ話」をお届けしています。今回は、ふだんの回より一歩踏み込んだ「専門シリーズ」の一本です。
今回は、銘板に書かれた型式名の読み方です。「MSE-100-6」のような記号と数字の並びは、はじめは呪文のように見えます。けれど、これは行き当たりばったりに付けられた名前ではなく、メーカーが決まったルールで「この電池はどんな方式で、どれくらいの容量か」を書き込んだものです。ルールさえ分かれば、銘板を見ただけで必要な情報の大半がわかります。工事会社の方が現場で困らないよう、頭から順に解説していきます。
型式名は「どんな電池か」と「大きさ」を一続きに書いたもの
型式名は、大きく分けて頭の記号部分と、続く数字部分でできています。記号がその電池の「方式と特性」を、数字が「大きさ(容量と電圧)」を表す、と考えると全体像がつかめます。
たとえば「MSE-100-6」なら、頭の「MSE」が方式と特性を表す記号、続く「100」と「6」が大きさを表す数字です。名前の前半を見れば方式や用途の見当がつき、後半を見れば何アンペアアワー・何ボルトかが分かります。以下、記号と数字をそれぞれ分けて見ていきます。
頭の記号は「方式・特性」を表す
頭の記号は、その電池がどんな方式で、どんな使われ方を想定した特性なのかを表します。ここを押さえると、補水がいるのかいらないのか、大電流向きなのか長寿命向きなのか、といった中身の見当がつきます。
取扱各社の公開カタログの範囲でいうと、たとえば制御弁式(補水のいらないタイプ)の標準的な形、同じ制御弁式でも大電流の放電に向いた高率形、寿命を長くとった長寿命形、非常用自家発電機の始動に使う始動用の形、といった具合に、シリーズごとに記号が割り当てられています。具体的な記号でいえば、制御弁式の標準形にMSE、高率放電に向いた形にHSE、長寿命の形にFVL、非常用発電機の始動用にFG、といった系統があります。
まずこの記号を見れば、「これは補水のいらない制御弁式だな」「大電流を短時間出す用途向けだな」といった見当がつきます。用途に合う電池を考えるうえでは、容量の数字より先に、この記号を確認することが大事になります。
数字が指すもの、容量(Ah)と電圧(V)
記号の後ろに続く数字は、多くの場合まず容量を、次に電圧を表します。前の数字で「どれだけ蓄えられるか」、後ろの数字で「何ボルトか」を示す、という並びです。
前の数字は、10時間率容量(Ah)を表すことがほとんどです。10時間率容量というのは、「ゆっくり10時間かけて放電したときに取り出せる容量」を基準にした値で、産業用蓄電池の容量表示の物差しになっています。そして、そのあとにハイフンでもう一つ数字が付くと、それが公称電圧(V)を表すことが多いです。
具体例で確認してみましょう。
- 「MSE-50-12」なら、50Ah・12V。制御弁式標準形で、容量50Ah、電圧12Vの電池です。
- 「MSE-100-6」なら、100Ah・6V。容量100Ah、電圧6Vの電池です。
- 「REH40-12」なら、40Ah・12V。REHという系統の、容量40Ah・12Vの電池です。
ここで一つ、つまずきやすい点があります。電圧の数字が付かず容量だけのもの、たとえば「MSE-150」のような表記です。これは電圧を省略しているのではなく、1セル(単電池)すなわち2Vを表すのが一般的です。つまり「MSE-150」は150Ah・2Vの単電池です。電圧の数字があるかないかで意味が変わるので、ここは丁寧に見てください。ちなみに、容量(Ah)に公称電圧(V)を掛けるとWh(ワットアワー)になり、カタログによってはこちらで表記される場合もあります。
末尾の記号が伝える「本体以外の仕様」
型式名の末尾に付く記号は、容量や電圧とは別の、追加された仕様を表します。工事会社の方が現場でよく目にするのが、末尾の(E)です。
(E)は、触媒栓が付いていることを示す記号です。補水がいるタイプの電池は、充電中に水が電気分解されて水素と酸素になって抜けていくため、放っておくと電解液が減ります。触媒栓は、この発生した水素と酸素を栓の中の触媒で水に戻す部品で、補水の間隔を延ばしてくれます。
ここで押さえておきたいのは、(E)が付いても容量は(E)無しと同じという点です。電槽(本体)そのものは変わらないので、設置に必要な面積も変わりません。「HS-100」と「HS-100(E)」は、容量も設置面積も同じで、(E)付きは補水の間隔が延びる、という関係です。末尾記号は、こうした「本体スペックそのものではないが、保守や仕様に関わる情報」を伝えていることが多いのです。
モノブロック品は「1個の電圧」で書かれている
6Vや12Vで一体になったモノブロック品は、読み方に少しコツがいります。銘板の型式は、あくまで「その1個の電圧と容量」を表しているという点です。
たとえば6Vのモノブロック品は、それ単体で6Vです。「HS-100-6」なら、100Ah・6Vの1個を指します。ではこれを12Vで使いたいときはどうするか。6V品を2個直列につないで12Vにする、という組み方をします。ここを間違えると、必要な個数がずれてしまいます。
だからこそ、型式の電圧表記を落とさずに拾うことが、数量の食い違いを防ぐ第一歩になります。銘板の「6」や「12」という一文字が、注文する数量を左右します。
容量が同じでも、記号が違えば別物のことがある
型式を見るうえで、もう一つ知っておきたいことがあります。容量の数字が同じでも、頭の記号が違えば単純な置き換えができないことがある、という点です。
というのも、頭の記号はその電池の方式や特性を表しているからです。方式が違えば、ふだんかけておく充電電圧の標準値が違ったり、想定している放電のしかたが違ったりします。制御弁式の標準形と高率放電向けの形とでは、同じ容量でも中身は別のものになります。ですから「容量の数字が合っているから」というだけで別型式の電池に置き換えることはできません。
REH40-12の納期が長いからといって、HSE-40-12に変更することはできません。寸法も用途も違うため、無理やり設置したとしても発電機が始動しない可能性があります。数字の上ではどちらも40Ah・12Vですが、シリーズが違えば、ふだんかけておく充電電圧の標準値も、想定している放電のしかたも変わります。REH形は2.275V/セル、HSE形は2.23V/セルというように、充電器側の設定に関わる値が違ってきます。納期を縮めたいときは、容量の数字が合う別系統を探すのではなく、同じ系統の中で手配のしかたを相談するほうが確実です。
一方で、記号が違っても置き換えを妨げないものもあります。GSユアサでは、複数の単電池を組んで納める組電池に、型式の途中にXの入った表記を使います。たとえば銘板に「MSEX-300」とあり、あわせて54セル・108Vと書かれていれば、中身はMSE-300の単電池を組んだものだと分かります。長寿命形のSNS形も、組電池になるとSNSXという表記になります。この場合のXは、方式や特性が違うことを表しているのではなく、組電池であることを示す表記です。ですから同じMSE形であれば、Xの有無にかかわらず、既設と同じ型式名の単電池でそろえられます。MSE形のように各社が同じ形式名で製造しているシリーズなら、当社は3社を扱っていますので、既設がどのメーカーであっても同じ型式名でお手配できます。ただし同じ型式名でも、総高や質量がメーカーによって少し違うことがありますので、盤内の納まりは念のため弊社にて確認します。
とくに更新のときは、既設と同じ考え方の電池でそろえてください。だからこそ、型式名は記号から数字の末尾まで、まるごと正確に把握することが大切になります。
わからないときは、銘板の写真を撮る
ここまでの読み方を知っていても、実物を前にすると迷う場面は必ず出てきます。そんなときは、少しでも迷ったら銘板を丸ごと写真に撮るのがいちばん確実です。
型式名だけを口頭やメモで伝えようとすると、記号の一文字や電圧の数字が抜けて、話が食い違うもとになります。銘板全体を撮っておけば、型式名はもちろん、容量や電圧、メーカー名、認定番号まで一度に写ります。そこまで情報があれば、こちらで正確に確認して、正しい形で提案します。
セントレイは、産業用蓄電池の仕入れ先として、この「銘板から型式を割り出す」ところをお手伝いしています。型式と数量がわかれば納期・価格が回答できますし、銘板の写真を送っていただければ、そこから先の話がスムーズになります。迷ったら、銘板を撮って送ってください。
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう!
──株式会社セントレイ 佐藤

