カタログの期待寿命は、周囲温度25℃・0.1CA以下の放電・適正な浮動充電を前提にした推定値であって、保証値ではありません。目安はMSE形で7〜9年、HS形で5〜7年、長寿命のFVL形で13〜15年(古河電池公式サイトの種類一覧より)。周囲温度が10℃上がると寿命はおよそ半分になるため、実際の更新時期は点検記録の傾向とあわせて判断します。
こんにちは、セントレイの佐藤です!このコラムでは、産業用蓄電池まわりの「現場で役に立つ話」をお届けしています。
今回は、期待寿命の読み方です。カタログに「MSE形の期待寿命7〜9年」と載っていても、これを「7〜9年で必ずダメになる」と受け取ると、更新提案のタイミングを外してしまうのが落とし穴なんです!数字の前提と、幅で示される理由を押さえておきます。
期待寿命の数字はどんな前提の値なのか
据置鉛蓄電池の期待寿命は、各社とも「加速寿命試験の結果を25℃に換算した推定値」であって、保証値ではありません。前提条件は概ね、周囲温度25℃・適正な浮動充電(制御弁式は2.23V/セル)・放電は年に数回程度(0.1C10A)です。この前提が崩れれば、実寿命は素直に前後します。
公表値の目安は、標準形のMSE形で7〜9年、高率放電用のHSE形で5〜7年、ベント形のHS形で5〜7年、長寿命MSE形(古河のFVL形・GSユアサのSNS形・エナジーウィズのMSJ形)で13〜15年です(いずれも25℃・各社公式)。
なぜ「7〜9年」と幅で示されるのか
「7〜9年」と幅があるのは、使用条件で寿命が変わるからです。中でもいちばん効くのが温度です。鉛蓄電池の寿命は、周囲温度が10℃上がるとおよそ半分になります。化学反応の速度がアレニウス則に従うためで、電池工業会の指針にも明記された一般則です。25℃を基準に、置かれた環境の温度が高いほど寿命は短くなる、と押さえておけば十分です。
たとえば盤内の年間平均が35℃なら、25℃との差は10℃。MSE形の7〜9年は計算上その半分、3.5〜4.5年まで縮みます。夏場に熱がこもる盤や換気の弱い電気室では、カタログ年数をそのまま使わず、温度分を割り引いて計画するのが実務です。逆に低温側では化学反応が緩やかになり寿命は延びる方向に働きますが、そのぶん低温では取り出せる容量が一時的に下がるため、寿命が延びる=安心とは単純に言えません。温度は寿命と容量の両面に効く、と押さえておくのが安全です。
放電電流(0.1CA・1CA・2CA)は寿命にどう効くのか
期待寿命は放電電流の大きさにも左右され、0.1CAを超える大きな電流で放電する使い方ほど短くなります。まずCAという書き方から整理します。CAは定格容量(Ah)に対する放電電流の倍率で、0.1CAは容量の10分の1の電流。100Ahの電池なら10Aで、10時間かけて放電する10時間率の放電に相当します(最初の節で触れた0.1C10Aの放電がこれにあたります)。1CAは容量と同じ数値の電流で100Ahなら100A、2CAはその2倍の200Aです。
この記事の写真に写っている古河電池のラベル「放電電流・蓄電池温度と期待寿命」には、期待寿命は蓄電池温度25℃かつ0.1CA以下の放電で使う場合が基準で、25℃を超える温度や0.1CAを超える放電電流で使うと短くなる、と明記されています。ラベルの表を読むと、25℃・0.1CA以下の放電を100%として、同じ25℃でも1CA放電なら90%、2CA放電なら80%。温度が30℃に上がると0.1CA以下でも70%、1CAで60%、2CAで55%。35℃になると0.1CA以下でも50%、1CAで45%、2CAで40%まで下がります。
この表から読み取れることが二つあります。一つは、温度の影響のほうが放電電流の影響より大きいこと。2CAという大電流でも25℃なら80%残るのに対し、35℃では0.1CA以下の放電でも50%、つまり半減です。前の節で見た「10℃上昇でおよそ半分」の一般則と、メーカーのラベルの数字がきれいに整合しているわけです。もう一つは、UPSのようにバックアップ時間が短く、容量に対して大きな電流で放電する使い方では、温度に加えて放電電流の分も割り引いて考える必要があることです。なお、ラベルにもあるとおり、この数値は実使用年数を保証するものではなく、スタンバイユース、つまり常時は待機して非常時に放電する使い方での期待寿命です。
写真のもう一枚のラベル「蓄電池取替について」には、取替時期の目安の年月とともに、寿命を超えて使用した場合は負荷を保持できないだけでなく、発煙・発火など重大な事故の原因となる恐れがある旨が記されています。期待寿命が安全にも直結する数字だということは、あわせて押さえておきたいところです。
更新時期は何で判断すればよいのか
更新時期の判断の主軸は、年数ではなく点検記録の推移です。年数が期待寿命に達しても、即交換とは限りません。総電圧やセル電圧のばらつき、制御弁式なら内部抵抗の対初期比を、前回・前々回と並べて向きを読む。1回の測定値の合否より、傾向が変わってきていないかを見ます。メーカーの技術資料では、規定値を外れるセルが組電池全体の一定割合を超えたら寿命と判定する目安も示されています。期待寿命はあくまで指標の一つで、点検トレンドと組み合わせて更新時期を決めます。裏を返せば、点検記録が数年分そろっているかどうかで、更新判断の精度は大きく変わります。なお、カタログの期待寿命と製品保証期間は別物です。保証期間は不具合対応の取り決めであって、その年数で寿命が尽きるという意味でも、そこまでは必ずもつという意味でもありません。混同しないよう整理しておいてください。
更新は検討から工事まで時間がかかるため、期待寿命の1〜2年前から動き出すのが定石です。設置年や点検データから更新時期をどう読むか迷ったときは、既設の型式と数量とあわせてご相談ください。傾向の見方から手配の段取りまで、一緒に整理します。
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう!
──株式会社セントレイ 佐藤

